乾坤一擲
- 意味
- 運命をかけて一か八かの大勝負をすること。
用例
重大な決断を下すときや、失敗すればすべてを失うような覚悟で挑む場面で使われます。
- 彼は起業という乾坤一擲の勝負に出た。
- 代表戦での彼のシュートは、まさに乾坤一擲だった。
- 最後の交渉に乾坤一擲の覚悟で臨む。
これらの例文のように、この言葉は失敗すれば取り返しのつかない状況で、人生や名誉をかけた行動をする場面を強調するために用いられます。リスクが極めて高い中で果敢に行動する姿勢が込められています。
注意点
「乾坤一擲」は、高尚な語感を持つ一方で、やや硬い表現でもあります。日常会話ではあまり使われず、主に書き言葉として、文芸作品、評論、スピーチなどで用いられます。
この熟語には、成否が完全に運に任されるという危うさが含まれているため、慎重で計画的な行動にはふさわしくありません。誤って「全力で努力する」という意味で使うと誤解されるおそれがあります。「賭け」に近いニュアンスであることを意識して使う必要があります。
また、字面から意味を取りにくいため、漢字だけで判断すると誤用につながることがあります。「乾坤」は「天地」「天下」、「擲」は「なげうつ」の意で、全世界の運命をかけて賽(さい)を投げるような行為を意味します。
背景
「乾坤一擲」は、中国・唐代の詩人、李賀(りが)の詩「雁門太守行」に登場する表現が元になっています。その詩中の「男児、乾坤一擲して、安くんぞ万古の名を得んや」という一節は、男児たるものは天下をかけた大勝負を挑まずして、どうして永遠の名声を得られようかという意味です。
この詩は辺境を守る将軍の勇壮さと決意を描いたものであり、後世の武将たちにも愛読されました。特に戦国武将たちは、戦局を決する一戦に挑む際、この詩を引用して自らを鼓舞したといわれています。
日本では、戦国時代や幕末の志士たちがしばしばこの言葉を座右の銘にし、明治以降は軍人・政治家・実業家の言葉として重用されました。たとえば、明治維新や太平洋戦争などの歴史的局面でも、この言葉は大いなる決断の象徴として引用されています。
近代以降、スポーツや企業経営など非戦闘的な文脈でも比喩的に使われるようになり、現代に至っても「人生の岐路における決断」のイメージを強く持つ表現として定着しています。
類義
対義
まとめ
「乾坤一擲」は、天地全体の命運をかけて、全力で一度きりの大勝負に臨むことを意味する四字熟語です。古代中国の詩人・李賀の詩に由来し、歴史的にも多くの人物がその精神を胸に重大な決断を下してきました。
この表現は、単なる努力や挑戦とは異なり、「運命の賽を一度だけ振る」という極限状況を描写します。そのため、使う場面にも緊張感が必要であり、本当の意味での賭けにふさわしい局面でのみ使うべき言葉です。
現代においても、事業の立ち上げや進退をかけた試み、人生の岐路などにこの言葉が用いられます。覚悟と決断を求められる場面で、いまなおその語感は人々の心を奮い立たせます。慎重に使うことで、「乾坤一擲」は行動者の決意をより印象深く際立たせる表現となります。