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挙国きょこく一致いっち

意味
国民全体が心を一つにして、同じ目的に向かって団結すること。

用例

国家的な危機や重大な課題に対し、政府・国民・各機関が協力し合って取り組むような場面で使われます。また、戦争や災害、経済再建などをめぐる呼びかけとしても用いられます。

この表現は、国家レベルでの結束や協調を象徴する言葉であり、個人や小規模集団の一致ではなく、「国全体」という大きな単位での団結を強調します。強い求心力や、全体意志の統一といったニュアンスも含まれています。

注意点

「挙国一致」は、非常に強い団結を求める言葉であるため、使う文脈によっては政治的・思想的な色合いが強くなることがあります。特に近代日本では、戦時体制や国策のスローガンとして多用された歴史的経緯があるため、使用には慎重な配慮が必要です。

また、「全員の意思が完全に一致している状態」を示すというより、「一致しているべきである」「一致しようと呼びかけている」という側面が強いため、実際には多様な意見や立場がある中での表面的な一致を指していることも少なくありません。無理な団結や同調圧力の温床になる恐れもあるため、表現の裏にある力学に注意すべき言葉です。

現代においては多元的価値観が尊重される社会であることを前提とし、「挙国一致」を掲げる際には、その目的や手段、方法論について慎重な合意形成が必要となります。

背景

「挙国一致」は、中国の古典文献にその語源を持ちつつ、近代以降に日本で特に強い意味をもって用いられるようになった熟語です。「挙国」は「国家全体」「全国民」、あるいは「国家を挙げて」という意味で、「一致」は「心や行動が一つになる」ことを指します。これを組み合わせて、「国家全体が心を一つにして動くこと」という強い集団的意志の統一を表す熟語となりました。

日本では明治維新以降、特に日清戦争・日露戦争・太平洋戦争といった大きな戦争を経験する中で、政府主導のスローガンとして「挙国一致」がたびたび掲げられました。たとえば、昭和初期には「挙国一致内閣」という言葉も登場し、政党間の対立を乗り越え、国家総力戦体制を構築することが謳われました。

また、第二次世界大戦下では「挙国一致体制」「一億玉砕」「国民皆兵」などと並んで、国民の思想統一と協力体制を強化するための政治的スローガンとして大々的に使われ、戦争遂行のための精神的な動員に深く関わりました。そのため、「挙国一致」という言葉には、戦争責任や政治利用に対する歴史的な批判の目も向けられています。

一方で、戦後には「災害からの復興」や「経済再建」など、国家的な努力を要する平和的な目標のためにもこの表現が用いられるようになりました。たとえば、東日本大震災の際には「挙国一致で支え合おう」といった呼びかけが多くのメディアでなされ、言葉の印象を柔らげるような使われ方が進んでいます。

ただし、現在においても、言葉の持つ力や過去の使われ方が人々の記憶に残っているため、慎重に意味を読み解きながら用いられるべき熟語といえるでしょう。

まとめ

「挙国一致」は、国家全体が一丸となって共通の目標に向かって動く様子を描く、力強い四字熟語です。重大な課題や危機に直面したとき、人々が立場を超えて協力する必要性を象徴的に表すことができます。

この言葉には、結束・協調・全体意志といったポジティブな要素がある一方、過去の歴史的文脈から、同調圧力や強制的な統一を想起させる側面も含まれています。そのため、現代においてこの語を用いる際は、その目的や文脈が正しく伝わるように注意する必要があります。

とはいえ、真に危機に瀕した状況や、全国民の力を必要とする局面では、「挙国一致」の精神が大きな力を発揮することもあります。大切なのは、誰かに強制される一致ではなく、自発的かつ共感に基づく協力があるかどうかです。

「挙国一致」という言葉を通じて、個の力を超えた連帯感や、共通の目標に向かって歩む意志が、人々に共有されるような社会のあり方を、改めて見つめ直すことが求められています。