WORD OFF

泥酔でいすい

意味
正常な言動ができないほど、酒にひどく酔うこと。

用例

酒を大量に飲み、立ち居振る舞いや言動が乱れるほどの酩酊状態に対して使います。節度を超えた飲酒や、その結果として起こる行動の描写に用いられます。

いずれも「軽く酔った」という段階を大きく超え、自制が効かないほどに酔いが進んでいる状態を表しています。

注意点

「泥酔」は日常語としても使われますが、酩酊の程度を強調する語であるため、冗談で使う場合も含めて場面や相手を選ぶ必要があります。特に公式な文書や医療・法律の場面では「酩酊」や「深酒」など別の表現が適する場合があります。

また、「泥酔」は本人の判断力が著しく低下し、他人に迷惑をかける可能性がある状態を指すため、使う際にはその社会的な影響や責任についても含意することになります。

比喩的な用法はあまりなく、もっぱら酒による酔いを描写する際に限定されます。

背景

「泥酔」は、文字通り「泥のように酔う」という漢語的表現からなる熟語です。「泥」はここで「泥のようにだらしない」「地面に崩れ落ちるような」といった否定的な意味を帯びています。漢字の構成からも分かるように、「ただ酔う」のではなく、「極端に酔い潰れる」ことを強く印象づける表現です。

語源的には中国古典において「泥酔」の用例はあまり見られませんが、日本では近世以降の文献でしばしば用いられるようになりました。江戸時代の浮世草子や滑稽本、小説、歌舞伎などでも、町人や武士が酒席で羽目を外す様子を描写する中で「泥酔」の語が効果的に使われています。

明治以降になると、新聞や雑誌などの活字媒体でも使われるようになり、今日では酩酊状態をあらわすごく一般的な語彙として定着しました。とくに警察や医療の分野では、酔いの度合いを「軽度酩酊」「中度酩酊」「重度酩酊(泥酔)」と段階的に分類することもあります。

なお、「酔い」の表現には「酔っ払う」「酔いが回る」「へべれけになる」などさまざまな俗語もありますが、「泥酔」はそれらよりもやや硬めの語感を持ち、深刻さや品位の欠如を伴って語られる傾向があります。

まとめ

「泥酔」とは、酒に極度に酔ってしまい、正体をなくすほどの状態を表す言葉です。語源的には「泥のように酔う」ことから、身体のふらつきや理性の喪失を含意しており、単なる酒好きではなく、自制を失った危険な段階の酩酊を示します。

現代でもこの語は、飲酒の程度を正確に伝えるために使われており、特に注意喚起や非難のニュアンスを含んで使われることが多いです。飲酒文化が見直されつつある現代において、「泥酔」という表現は、節度を超えた飲み方への警告や社会的批判の文脈でもしばしば登場します。

一方で、文学や物語の中では、酒に酔って本音を漏らす、常識を逸脱するという描写にも用いられ、人間の弱さや滑稽さを描き出す語として機能しています。

節度を持って飲むことの重要性が強調される現代においても、「泥酔」という言葉は、私たちに飲酒の境界線を思い出させる一つの目安となっているのです。