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わかとき苦労くろうってもせよ

意味
若いうちの苦労は将来の糧となるので、自ら進んで経験すべきであるという教え。

用例

成長のためには、若い時期に苦労や困難を避けず、むしろ積極的に挑戦した方がよいという場面で使われます。親や上司が若者に向けて激励したり、自分を奮い立たせる言葉としても用いられます。

これらの例文では、「今は大変だが、それは将来の財産になる」という考えに基づき、困難な経験を前向きに受け入れる姿勢が示されています。自身の成長や人間的な深みを得るために、若いうちに多くの経験を積むことの意義を語る表現です。

注意点

この言葉は、若い人に努力や忍耐を促す点で有益ですが、使い方によっては「若い人には我慢を強いてよい」「理不尽も受け入れろ」といった古い価値観の押しつけと受け取られる恐れもあります。

また、「苦労」には本来、避けられないものと、自ら選び取るものの両方がありますが、この言葉は後者、すなわち「学びの機会としての苦労」を前提としています。その意味を誤解して、ただの過重労働や無意味な辛抱を肯定するような使い方は避けるべきです。

背景

「若い時の苦労は買ってもせよ」は、日本の教育観や職業観に深く根ざしたことわざです。古来、修行や徒弟制度のもとでは、若者は親方や師匠のもとで長年にわたって無給あるいは低賃金で働きながら技術や礼儀を学んでいくのが当たり前とされてきました。

このような制度の中で「苦労して一人前になる」という価値観が育まれ、若い時期の努力がその後の人生の土台になるという認識が生まれました。江戸時代の町人文化でも、丁稚から番頭、そして暖簾分けといった出世ルートの中で、辛抱や苦労が美徳とされてきました。

また、儒教の思想にも、「苦難を通じて徳を養う」という考えがあり、日本の道徳教育や家庭内でのしつけにもその影響が色濃く見られます。「若いうちに苦しみを経験することが、人間としての幅を広げる」という思想は、時代を超えて語り継がれてきたのです。

ただし、現代においては労働環境や教育の在り方も変化しており、この言葉が意味する「苦労」も再定義が求められています。たとえば、長時間労働ではなく、多様な経験やチャレンジングな学びを指す方向でとらえることが推奨されます。

類義

まとめ

「若い時の苦労は買ってもせよ」は、将来のためにこそ、若い時期には苦労をいとわず、むしろ積極的に受け入れるべきだという人生訓です。厳しい経験を通じてしか得られない学びや成長があることを教えてくれます。

この言葉は、努力の価値を見失いがちな現代においても、「今の苦労が未来の力になる」という信念を与えてくれます。ただし、その「苦労」は盲目的な我慢ではなく、自らの成長のために選び取るべきものととらえることが重要です。

人は楽な道ばかりでは学べません。失敗、挫折、葛藤――そうした経験を若いうちに重ねることが、将来の選択肢や人間的な深みを広げてくれます。この表現は、その事実を静かに、しかし力強く伝えてくれる言葉なのです。