二兎を追う者は一兎をも得ず
- 意味
- 同時に二つのものを手に入れようとすると、結局どちらも得られないということ。
用例
欲張って複数の目標や利益を同時に追いかけた結果、すべて中途半端になって失敗する場面で使われます。仕事や勉強、人間関係などで、優先順位を明確にしなければならないときに用いられます。
- 副業と本業、どっちも全力でやるつもりだったけど、二兎を追う者は一兎をも得ずで、結局どちらも成果が出なかった。
- 恋愛とキャリア、どちらも中途半端で終わってしまった。二兎を追う者は一兎をも得ずだったな。
- 試験勉強と趣味の両立を目指したけれど、二兎を追う者は一兎をも得ずという結果になってしまった。
これらの例文は、「あれもこれも」と手を出した結果、集中力が分散して成果が出ない様子を表しています。意志や目的を明確に持つことの大切さ、優先順位の判断力が問われる文脈で効果的に使われます。
注意点
この言葉は「欲張るな」という戒めとしてよく使われますが、必ずしも複数の目標を持つことが悪いわけではありません。同時進行の工夫や段階的な戦略によって、複数の成果を得ることも可能です。つまり、この言葉は「すべてを同時に」「無計画に」追う危険性への警告として受け取るべきです。
また、誰かの挑戦を否定するような形で使うと、意欲をくじく結果になることもあるため、使う場面や相手の意図をくみ取ることが大切です。
背景
「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざは、日本に古くから伝わる民間の教訓表現で、実際に野兎を追う狩猟の様子に由来します。二匹の兎が左右に逃げたとき、どちらにも狙いを定めきれず、結果としてどちらも捕まえられないという実際の狩猟経験が背景にあります。
このような「狙いの分散が失敗を招く」という感覚は、日本だけでなく世界各地に見られます。たとえば、英語にも “He who chases two rabbits catches neither.” という表現があり、文化は違えど人々が共通して抱いてきた人生の教訓であることがわかります。
また、日本では江戸時代以降、商人や職人たちの間でも「集中が利益を生む」「欲をかけば失敗する」といった考えが広く共有され、この言葉は商売や生き方の戒めとして浸透していきました。人の欲望や焦りを静かにいさめ、慎重に一つずつ物事に向き合うことの大切さを伝えてきたのです。
禅の思想や武士道の精神にも、「一念集中」や「専一の心」といった概念が強調される場面があり、「二兎を追う者は一兎をも得ず」は、そうした精神論とも相性が良く、語り継がれてきたと考えられます。
類義
対義
まとめ
「二兎を追う者は一兎をも得ず」は、目標を欲張ることでかえってすべてを失うという教訓を伝える言葉です。あれもこれもと手を出す前に、まずは自分が何を一番に追うべきかを見極める姿勢が求められます。
集中することで得られる成果は、分散した努力では得られない深みや確実性を生みます。何事も順序と計画が大切であり、複数の目標を持つにしても、それぞれに適切なタイミングと配分を考える必要があります。
この言葉は、ただの「諦め」や「一途さの美化」ではなく、「戦略的な集中」の重要性を説いているとも言えます。だからこそ、目先の利益や短期間の成果に心を奪われず、長期的な視点で一つずつ確実に歩むことが、本当の成功につながるのです。
選ぶべきものを見定め、今なすべきことに集中する力。それを思い出させてくれるのが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉なのです。