WORD OFF

てきもさるものくもの

意味
相手もなかなかの実力者であると認める言葉。

用例

相手の力量を見直したり、油断していた自分を戒めたりするときに使われます。とくに、勝負ごとや交渉、知恵比べの場面で相手の技量に感心する際に用いられます。

この表現は、相手の能力を高く評価することで、単なる驚きや敗北感を和らげつつ、敬意や悔しさをこめた言い回しとして使われます。

注意点

「敵もさるもの引っ掻くもの」は、相手を評価する表現ですが、皮肉や驚きが込められている場合もあります。文脈によっては悔しさや焦りがにじむため、完全な賞賛の言葉というわけではありません。

また、日常会話では「敵もさるもの」という短縮形で使われることも多く、後半の「引っ掻くもの」は省略されがちです。ただし、ことわざとしての原形は「引っ掻くもの」まで含まれており、そこに「油断すれば逆にやられる」という含意がある点は理解しておく必要があります。

相手を「敵」と呼ぶ表現でもあるため、冗談や軽口の場面を除いて、目上の人物や立場の異なる相手には注意して使うべきでしょう。

背景

「敵もさるもの引っ掻くもの」は、戦いや勝負において相手が想像以上に手強く、計略や技量を備えていたと気づいたときに使われる表現です。この言い回しは、もともと武芸や勝負事を題材とする江戸時代の読み物や落語などで見られたもので、当時の市井の人々の言語感覚や遊び心が色濃く反映されています。

「さるもの(去る者)」は古語の「然る者」に通じ、「それなりの者」や「なかなかやる者」という意味で使われます。一方「引っ掻くもの」は、「引っ掻く」という単語が持つ攻撃性をもって、「ただの相手ではなく反撃してくる手強い存在」を示しています。つまり、「さすが敵だ、反撃もしてくる」という意味がこの言葉には込められているのです。

このことわざは、対戦相手を一方的に侮ることなく、相手の腕前や策略を認める懐の深さも感じさせます。その点で、日本的な「負けても相手を立てる」「敵ながらあっぱれ」という価値観と親和性が高いと言えるでしょう。

また、この表現は単なる勝負だけでなく、ビジネスや交渉、討論の場面など、広く「知恵比べ」や「駆け引き」にも使われるようになりました。現代でも、策略に富んだ人物に対して、「やられたが見事だった」と述懐する際に好んで用いられています。

言葉の構成自体にも洒落が含まれており、堅苦しさを抑えつつ含蓄をもたせることができるため、物語や時代劇の中でも印象的な決まり文句として親しまれてきました。

まとめ

「敵もさるもの引っ掻くもの」ということわざは、予想以上に手強かった相手に対する驚きや敬意、悔しさを含んだ評価の表現です。勝負や知恵比べ、競争の場面でよく使われ、ただの敗北ではなく、相手の力量を認める姿勢を含んでいます。

この言葉は、相手を敵と呼びながらも、その力量に対する認識と評価を内包しており、ただの皮肉ではなく、文化的に培われた「相手を立てる」精神の表れでもあります。特に、油断していた自分への自戒として使う場合において、その教訓的な価値が際立ちます。

また、言葉の語感や韻律の面でも親しみやすく、堅苦しくならずに感情や評価を伝えることができるため、日常会話や文章表現において今も有効に機能しています。

油断は禁物、相手を甘く見てはいけないという戒めとして、「敵もさるもの引っ掻くもの」は、今もなお多くの場面で説得力あることわざとして使われています。