田父の功
- 意味
- 争っている者がともに力尽きた後、第三者が利益を得ること。
用例
権力争いや競争の場面で、当事者同士の争いが激しすぎるあまり、第三者に有利な結果をもたらす場合に使います。特に政治、ビジネス、スポーツなどの駆け引きの場面で適用されます。
- A社とB社が激しい価格競争を繰り広げた結果、両社の利益が減少し、C社が田父の功で大きなシェアを獲得した。
- 部署内で二人の課長が意見をぶつけ合って両者とも訓戒となり、若手社員が田父の功で重要なプロジェクトを任されることになった。
- 二人の作家が互いに批判し合って、どちらも評判を落とし、新進作家が田父の功で注目を浴びることになった。
ここでは、争いの当事者が自らの力を使い果たしてしまい、その隙に第三者が利益を得ることを指します。偶然の結果ではなく、争いそのものが第三者の利益につながるという点に注目する表現です。
注意点
このことわざは、単なる幸運や偶然ではなく、争いや競争の激化によって第三者に利益が生じる場合に使います。争いの当事者に対して批判的なニュアンスを含むため、文脈を誤ると相手を非難する印象になりやすい点に注意が必要です。
背景
「田父の功」の典拠は中国戦国時代の『戦国策』にあります。「犬が兎を追いかけ、互いに力尽きて死んでしまいました。そこへ通りかかった田夫(農夫)が二匹とも手に入れた」という話です。その後には、「同じように我が国も他国と争えば、それによって疲弊しているうちに、別の強国に狙われるに違いない」と続いています。この寓話から、争いの激化で当事者が力尽きると、第三者が利益を得るという教訓が生まれました。
原義は農民の自然の恩恵に基づく成果の比喩でしたが、戦国時代の政治的・戦略的文脈で「争いによって第三者が利益を得る」という意味に発展しました。特に諸侯間の権力争いや軍事行動の文脈で、この教訓は重要視されました。
『戦国策』は、戦国時代の諸侯間の外交、戦略、政治駆け引きを記録した書物であり、策略や智謀の事例を多く含んでいます。田父の功の逸話は、政治・戦略の場面で「争いの激化が第三者の利益になる」という普遍的な原則を示すものとして引用されました。
この寓話は単なる戦略論にとどまらず、日常生活やビジネス、組織運営にも応用できる教訓を提供しています。争いの当事者が過剰に力を使い果たすことで、冷静な第三者が利益を得る構図は現代にも通じます。
日本にも古くから伝わり、政治的権力争いや企業競争などで「田父の功」として用いられ、争いの結果として意図せずに利益を得る第三者の存在を説明する表現として定着しました。
類義
まとめ
「田父の功」とは、争いの激化によって第三者が利益を得ることを示すことわざです。当事者同士の過剰な争いが、思わぬ形で他者に成果や利益をもたらすという教訓を含んでいます。
その出典は『戦国策』の寓話にあり、犬が兎を追い、互いに力尽きるところへ田夫が通りかかり、両方を手に入れる話に基づいています。この逸話は、争いが激しすぎると当事者が損をし、第三者が利益を得る構図をわかりやすく示しています。
現代においても、ビジネス、政治、組織運営などの競争の場面で、争いの激化によって第三者が得をする状況を説明する際に用いられます。過剰な争いや無意味な対立のリスクを示す、戦略的な知恵を伝えることわざです。