盾に取る
- 意味
- 自分に都合のよい口実や理由にすること。
用例
自らの主張や行動を正当化するために、法律や一般論、上司の言葉などを利用する場面で使われます。
- その政治家は「国民のため」という言葉を盾に取って、自分に都合のいい政策を進めているように感じる。
- 彼はいつも社長の言葉を盾に取って自分の提案を押し通そうとする。
- 子供の教育を盾に取って、自分の都合ばかり主張するのはどうかと思う。
いずれの例も、「~を盾に取る」ことで、自分に有利な立場を確保しつつ、他者からの批判や反論を回避しようとする態度が見受けられます。
注意点
「盾に取る」は、本来は防御のための道具である「盾(たて)」のように、他者の言動や外部の権威を自らの防御や正当化のために利用する意味で使われます。そのため、一般に批判的・否定的なニュアンスを含む言い回しです。
使い方としては、「~を盾に取る」「~という口実を盾に取って」といった形が多く、対象となるのは人物・制度・言葉・信条など、なんらかの権威や正当性を持つものです。
ただし、単なる「引用」や「援用」とは異なり、裏に自己保身や責任逃れの意図がある場合にのみ成立する表現なので、使用には注意が必要です。誉め言葉としてはほとんど使われません。
背景
「盾に取る」という表現は、もともと戦場における「盾」の使い方に由来します。盾とは、敵の攻撃を防ぐための防具であり、矛(ほこ)に対する防御の象徴です。この盾を「取る」という動作は、自分を守るための準備をすることにほかなりません。
これが転じて、「人の言葉や社会的な立場、あるいは制度や権威を、自分への批判や攻撃から身を守る道具として利用する」という比喩的な意味で使われるようになりました。たとえば「親が反対しているから」「法律がそうなっているから」と言って自分の決断を避けるような態度が、「盾に取る」という表現にぴったり当てはまります。
この表現は古くから文語や口語において使われており、特に政治や権力構造における「権威の利用」や、組織における「責任の回避」など、現代でも通用する人間関係の構図を鋭く表しています。
一方で、「盾」という言葉が防御一辺倒の姿勢を象徴しているため、「主体性のなさ」や「責任を他に転嫁する態度」がにじみ出ることになり、それがネガティブな評価へとつながっているのです。
類義
まとめ
「盾に取る」という表現は、自分を守るために他人の言葉や制度、権威を利用することを指し、往々にして責任逃れや自己正当化の手段として批判的に用いられます。特に、自分の主張を押し通したり、他者の批判をかわしたりする際の方便として使われる傾向があります。
この言葉は、防具である「盾」の性質を巧みに比喩化しており、相手の攻撃を避けつつ自らの立場を守るという人間の心理的行動を的確に言い表しています。現代社会においても、職場や政治、教育、家庭など、あらゆる場面で見られる構図であり、聞く人・読む人に強い印象を与える表現です。
ただし、その使用には慎重さも求められます。誰かが「盾に取っている」と非難する場合、裏にある動機や背景を見極める必要があります。また、自分自身が「盾に取っている」と思われないようにするには、正面から意見を述べる誠実さが求められるでしょう。
責任を曖昧にすることなく、自分の言葉で語る姿勢が尊ばれる現代において、「盾に取る」という態度がどれほど信頼を損なうか。そのことを忘れずに言葉を選ぶ意識が求められます。