急いては事を仕損じる
- 意味
- 焦って行動すると、かえって失敗しやすくなるということ。
用例
重要な作業や判断を急ごうとする人に対して、慎重さを促す場面で使われます。仕事や日常生活のなかで、焦りによるミスを防ぎたいときに適した表現です。
- 締切に追われて無理に書き上げたが、急いては事を仕損じる、誤字だらけだった。
- 渋滞を抜けようと無理に車線変更して事故を起こした。急いては事を仕損じるだな。
- 大切なプレゼンだからこそ、準備は丁寧にしよう。急いては事を仕損じるのだから。
これらの例文では、急いだためにかえって望ましくない結果になった例を挙げています。注意深く物事を進めるべきという教訓がこめられています。
注意点
この言葉は日常的にも広く使われますが、注意すべきは、単に「遅ければよい」という意味ではない点です。ゆっくり過ぎても進まないのでは本末転倒です。「焦るな」という戒めと、「適切なスピードで着実に行え」という暗黙の勧めが両立しています。
また、感情的な場面でこの言葉を投げかけると、相手に冷水を浴びせるように感じられることがあります。使うときには、落ち着いた口調や言い回しを心がけ、思いやりをもって伝える必要があります。
本来の目的は「成功するための助言」であり、単にブレーキをかけるためのものではないという視点が大切です。
背景
「急いては事を仕損じる」は、日本の古くからのことわざで、「焦って物事を進めようとすると、かえって失敗する」という経験則から生まれたものです。
この言葉の背景には、長い時間をかけて形づくられてきた「慎重さを美徳とする」日本人の価値観があります。農作業や手工業など、段取りや準備を要する伝統的な仕事の多くでは、手順を省略したり、焦って進めたりすることが、かえって成果を台無しにする要因となってきました。
類似の言い回しは、古代中国の書物にも見られます。たとえば、『荘子』には、「急がば回れ」のような教訓があり、西洋でも「Haste makes waste(急ぐことは浪費を生む)」という表現があります。つまり、世界各地で「急ぎすぎることの危うさ」は共通の知恵とされてきたのです。
また、江戸時代の商人道や職人道の中でも、慌てず丁寧に仕事を進めることが信用と品質に直結するという教えがありました。この言葉は、そうした職業倫理や人生訓の中で生きてきた表現でもあります。
現代では、仕事のスピードや即応性が重視される場面が多くなってはいますが、それでも「正確さ」や「丁寧さ」を求められる仕事においては、このことわざの持つ教訓は今なお有効です。
類義
対義
まとめ
「急いては事を仕損じる」は、焦って行動すると失敗を招くという、日常にも仕事にも通じる重要な教訓を含んだ言葉です。
この言葉の背後には、段取りを重んじ、冷静に物事を運ぶことを尊ぶ価値観が息づいています。どんなに急ぐべき理由があっても、準備不足や確認不足が結果に悪影響を及ぼすなら、それは本末転倒であり、長い目で見れば時間の浪費にもなりかねません。
スピードと正確さの両立は難しく、それこそが成熟した判断力の証でもあります。急いでいるときほど、一度立ち止まる――そんな姿勢こそが、この言葉の真意を活かす道といえるでしょう。
現代社会の忙しさのなかでも、物事の本質を見失わず、確実に進めるための知恵として、「急いては事を仕損じる」はこれからも大切にしていきたい言葉です。