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犬馬けんばろう

意味
目上の人のために全力を尽くして働くことをへりくだっていう言葉。

用例

目上の人物に仕える際や、忠誠心を示す場面で、自分の尽力をへりくだって述べるときに使います。とくに書簡やスピーチなど、格式ばった場面でよく用いられます。

これらの例文では、自分の働きを謙遜しつつ、誠意と忠誠心を伝えようとする姿勢が表れています。現代でも改まった挨拶や儀礼的な文書に使われることがあり、日本語特有の謙譲の美意識が感じられる表現です。

注意点

「犬馬の労」は、自分自身の努力を卑下するための言葉であり、他人に対して用いると大変失礼になります。たとえば、部下の働きを「犬馬の労」と表現するのは不適切です。

また、「犬馬の心」「犬馬の歯」など、字面の似た表現と混同しないよう注意が必要です。いずれも自分をへりくだる表現ではありますが、対象や意味に違いがあります。「労」は労力・働き、「心」は忠誠・誠意、「歯」は年齢に関わる内容です。

口語で使うにはやや古風な印象を与えるため、使用場面は手紙・挨拶・祝辞などに限定した方が無難です。

背景

「犬馬の労」という言い回しは、中国の古典に端を発しています。「犬馬」は古くから「つまらぬ者」「下僕」「人に使える動物」など、自らを卑下して呼ぶ語でした。

これに「労(ろう)」がつくことで、「犬や馬のようにつまらぬ者が、身を尽くして尽力する」という意味合いになります。とくに儒教文化においては、君主や目上の人物に仕える者が、謙遜を示すために自らを「犬馬」と呼ぶことが習わしでした。

日本でもその思想は古代から受け入れられ、武士や官人たちが使う言葉の中に取り入れられました。平安時代以降の公家社会、江戸期の武家文書において、「犬馬の労を尽くす」という表現が多く見られます。

また、近代以降の日本でも、「忠誠」や「奉仕」の精神を強調する言い回しとして、この表現が祝辞や演説に取り入れられました。戦前の教育や公務の世界では、こうした謙遜表現が重んじられており、今もなお儀礼的な文章の中に生きています。

まとめ

「犬馬の労」とは、自らの努力や労力をへりくだって述べる際の言い回しであり、忠誠や誠意を込めて用いられます。古代中国の思想に由来し、日本の儀礼的な言語文化の中で長く生き続けてきました。

現代でも格式ある文脈では見られ、目上の人物への敬意を表す有効な表現ですが、口語的な会話にはやや堅苦しさが伴うため、使用の場面を選ぶ必要があります。

「犬馬」という言葉自体に強い自己卑下のニュアンスが含まれているため、他者への使用は避け、自らの行動や姿勢に限定して使うのが基本です。「犬馬の労」は、日本語に残る謙譲美の象徴的な言葉といえるでしょう。