WORD OFF

兄弟けいていかきせめげども、そとそのあなどりをふせ

意味
兄弟は内部でけんかしていても、外敵に対しては力を合わせてこれを防ぐということ。

用例

内輪では衝突や意見の対立があっても、外部の脅威には一致団結して立ち向かうべきだ、という場面で用いられます。国家や組織、家族などで内部の不和があるとき、その結束の重要性を訴える文脈で使われます。

このように、内に対立があること自体は否定せず、むしろそれを前提としたうえで、外敵に対しての団結の大切さを強調するときに使います。

注意点

この言葉は、内部に不和や対立がある状況を当然視する側面があるため、場合によっては「内輪もめ」を正当化するような印象を与えるおそれがあります。本来の主旨は「外に対しては一致団結せよ」という点にあるため、内部対立を是とするのではなく、それを乗り越えて共通の目標に向かう姿勢に重点を置く必要があります。

また、字面が古風で長いため、口語表現や日常会話ではやや使いにくい面があります。理解しづらい相手に対しては、意味や出典を添えて用いることが望まれます。

内部の争いが深刻すぎる場合、外敵に立ち向かうどころではないこともあります。この表現を使う際は、理想的な姿勢を説くものとしての性格を忘れず、現実との乖離がないよう配慮が必要です。

背景

「兄弟牆に鬩げども、外その務りを禦ぐ」は、中国・『礼記(らいき)』の「檀弓(だんく)」篇に見られる言葉です。

「牆(かき)に鬩ぐ」は「垣根の内側で争う」ことを意味し、これは兄弟など親しい関係者が身内で言い争っている様子を表します。しかし、その争いはあくまで内向きのものであり、外からの脅威があれば、すぐに一丸となって立ち向かうという道徳的な理想を語っています。

この思想は儒教における「忠恕(ちゅうじょ)」や「親疎(しんそ)」の倫理観に基づいています。すなわち、家族や仲間はたとえ内部での葛藤があっても、外敵に対しては連帯するべきであるという考え方です。

中国の古典では、国家の統治や軍事的な対応にもこの教訓が引き合いに出されることが多く、特に戦国時代や三国時代のように、内部分裂が国家の滅亡を招く例が多数あったため、このような道理は極めて現実的な警句として重んじられました。

日本においても、戦国時代の合戦や幕末の政争など、内輪の対立が外敵の侵略や干渉を許す原因になったことは多くありました。こうした歴史的な背景の中で、この言葉は警句として引用されることが多く、軍事・政治・経営など、あらゆる分野で教訓として伝えられています。

現代でも、家族、組織、国家といった共同体において、内部の意見の相違があっても、共通の利益や脅威に対しては団結するという倫理や戦略を示す表現として、重みをもって引用される言葉です。

まとめ

「兄弟牆に鬩げども、外その務りを禦ぐ」は、身内での争いはあっても、外部の脅威に対しては一致して守りにあたるべきだという、集団の在り方を説いた言葉です。対立や衝突を否定するのではなく、それを超えて協力する精神を尊ぶ点に、この言葉の核心があります。

現代社会においても、組織や国家が内部分裂してしまうと、外部からの批判や干渉に弱くなります。だからこそ、内部の違いを認め合いつつ、共通の課題に対しては手を取り合うという姿勢が重要であり、この言葉はその意義を象徴しています。

単なる理想論ではなく、現実の集団運営や危機対応においても、この表現が持つ意味は深く、普遍的です。「兄弟牆に鬩げども、外その務りを禦ぐ」は、分断の時代にこそ見直されるべき、人と人との絆の力を語る教訓なのです。