WORD OFF

たりかしこ

意味
好機を得たときに「しめた」と得意になること。

用例

主に、自分にとって都合のよい展開や思い通りの状況になったとき、「うまくいった」という気持ちを隠しきれない様子を表す場面で使われます。特に、相手の出方を読んでいた通りだった場合や、したたかな計算が功を奏した瞬間に使われます。

これらの例文はいずれも、自分の思い描いていた展開になったときに、まるで「してやったり」と心の中で叫ぶような感覚を表しています。しばしば、その心情をそのまま表す言葉として用いられ、表現としてはやや古風ですが、今も書き言葉や比喩的な用法として生き残っています。

注意点

この言葉は本来、話し手自身の内心の満足感や勝利感を語るものであるため、使い方によっては傲慢や不遜な印象を与えることもあります。特に第三者の成功や策略を評価する際にこの表現を使うと、皮肉や揶揄と受け取られる場合があるため注意が必要です。

また、口語表現としてはやや時代がかっており、日常会話ではあまり使われないことから、使いどころによっては古風すぎる印象を与えることもあります。しかし、文章や創作、芝居の台詞などでは今も効果的に使われています。

「賢し」という語は、現代では「かしこい」と読むことが一般的ですが、古語としては「さかし」と読み、「利口だ」「思慮深い」「したたかだ」といった意味があります。ここでは、うまく立ち回ったことを誇る響きを持っています。

背景

「得たり賢し」は、古典語や中世の武士言葉に由来する表現で、「得たり」は「(好機を)得たぞ」「うまくいった」といった意味の感動語、「賢し」は「思慮深い」「利口な」という意味の形容詞です。

この言葉が用いられるようになったのは、主に戦国時代から江戸時代にかけてと考えられます。武士たちが戦略や知略によって敵を出し抜いたとき、「得たり賢し!」と内心で叫んだり、口にしたりする場面が多く描かれてきました。講談や軍記物などでは特に頻繁に登場し、読者や聴衆に対して、人物のしたたかさや勝ち誇った心情を強調する効果を持っていました。

たとえば、戦国武将が奇襲や謀略によって敵軍を誘い込み、予想通りの展開となったときに、「得たり賢し!」と叫ぶ姿は、物語的な演出の一つとして定番化していきました。この言葉には、冷静な観察と鋭い判断を持つ知将の面目躍如というイメージが強く結びついています。

また、江戸時代になるとこの言葉は芝居や落語の中でも多用されるようになり、登場人物の心の声や誇らしげな表情を描く表現として親しまれました。現代においても、文学作品や歴史劇などの中でしばしば登場し、古風ながらも独特の風格とユーモアを感じさせる言い回しとして生き続けています。

日常語としては使用頻度が減っていますが、その分、特別な文脈で用いられると印象に残りやすい表現でもあります。文章や会話において巧みに取り入れることで、相手に機知や含意を伝えることが可能です。

まとめ

「得たり賢し」は、思惑通りの展開になったときの満足感や、「してやったり」という内心の勝ち誇った気持ちを表す表現です。古風な語感を持ちながらも、その感情の動きは現代人にも通じるものがあり、印象的な表現として今も使われています。

もともとは戦いや策略の場で使われた言葉ですが、現代ではビジネスや交渉、創作の場などでも比喩的に応用され、自分の読みや判断が的中したときの喜びを象徴する言葉として親しまれています。

ただし、この言葉にはある種の得意げな態度や、相手を出し抜いた優越感が含まれるため、使う際には場面や語調に注意が必要です。無闇に使うと傲慢に聞こえる可能性もありますが、適切な文脈で用いれば、鋭さと機転を表す粋な言葉にもなります。

したたかに構え、狙い通りに物事が進んだとき、心の中でそっと「得たり賢し」と呟く――そんな控えめな誇りや喜びの表現として、この言葉は今後も大切にされていくことでしょう。