入るを量りて出ずるを為す
- 意味
- 収入を考慮して支出を計画すること。
用例
家計や事業の経済的な管理について述べるとき、あるいは節度ある生活や無理のない予算の立て方を示す際に使われます。無計画な出費を戒め、堅実な金銭感覚の重要性を伝える表現としても広く使われています。
- 新生活を始めるにあたっては、入るを量りて出ずるを為すことを心がけなさいと、母に教えられた。
- 給料の額を見ずにカードを切るのは危険だ。入るを量りて出ずるを為すという言葉を思い出せ。
- 店を任された彼は、まず入るを量りて出ずるを為すことから始めた。だからこそ、短期間で経営が安定したのだ。
例文では、「収入に応じた出費の管理」が中心テーマになっています。浪費や借金に走らず、慎重に金銭を扱うことの大切さを語る場面で自然に用いられています。
注意点
この言葉は非常に堅実な考え方を示す一方で、時として「守りに入りすぎる」といった批判や、成長機会を逃すというニュアンスに繋がることもあります。たとえば、企業経営や投資においては、収入を過度に見積もって支出を抑えすぎると、競争力を失う可能性もあります。
また、現代ではクレジットやローン、サブスクリプションなどの仕組みが一般的になり、即時の収入と支出のバランスが見えにくくなっています。そのため、表面的な収支だけで判断することの難しさもあります。
とはいえ、基本的な生活設計や事業計画においては、収入を前提とした支出の見通しを立てる姿勢は、いまなお普遍的な重要性を持っています。無計画な出費や見栄に走ることを戒める言葉として、特に若い世代への教訓として使われることも多いことわざです。
背景
「入るを量りて出ずるを為す」という言葉は、儒教的な生活の心得に基づいた教訓として、古くから日本人の生活思想に根づいてきました。言い回しの調子からも分かる通り、これは中国古典、特に『礼記』や『論語』といった儒教経典の教えに由来する表現であり、道徳的な生活の基本原理として扱われてきました。
江戸時代には、武士や町人、農民を問わず、「倹約」「節制」「分相応」が美徳とされました。武士は禄高に応じた生活を、町人は商売の規模に応じた支出を、農民は年貢と自作分の範囲での暮らしを、いずれも「入るを量る」ことから始めるべきだとされていたのです。
明治以降の日本においても、経済観念や道徳教育の中でこの言葉は繰り返し登場しました。特に家庭教育や初等教育では、「入るを量りて出ずるを為す」は「身の丈に合った生活をすること」の代名詞として教えられてきました。
また、この言葉は企業経営の基本原則としても引用されることがあり、特に創業期や不況下では「入るを量る」ことの重要性が見直されます。現代においても、金融機関による審査の観点や、資金繰りの健全性を示す表現としてこの言葉が使われることもあります。
歴史を通じて、多くの人々の経験則に根差した教訓がこの一語に込められており、それは時代が変わっても色褪せることのない普遍的な価値を持っています。
類義
まとめ
「入るを量りて出ずるを為す」は、収入に見合った支出を心がけるという、堅実な生活や経済活動の基本を説いた言葉です。
この言葉は、節度ある金銭感覚を持ち、先々を見通した支出を計画することの大切さを教えています。日常生活や家計、事業の運営において、安定を保つうえで欠かせない心得として、時代を超えて今なお多くの人々に重んじられています。
浪費に走りがちな現代社会においてこそ、分相応という言葉とともに、この教えは改めて見直されるべき価値があるといえるでしょう。堅実な生き方の指針として、静かな重みをもつ言葉です。